トリップ少女

「だから翡翠、気にしなくていいのよ。多分1時間もすれば元に戻るわ。」



深緑色の髪の人魚が翡翠を慰めた。




「翡翠、ごめんね…私、自分でも分からないんだけど記憶がないみたい。」


若菜はいつまでも泣き止まない翡翠をかわいそうに思った。


「だからもう、泣かないで」




しゃっくりあげていた翡翠はようやく泣き止み、顔を上げていった。


「私の方こそごめんなさい。記憶がなくなって戸惑っていたのは若菜だというのに。」




「ううん、大切なあなたを忘れるなんて私のほうこそどうかしていたわ。」


しかし若菜の頭にはひとつの疑問が浮かんでいた。


・・・翡翠って姉妹なの?親友なの?どんな設定なの??


そう思ったけれど聞けなかった。



「お詫びに私の真珠で一番大きいの、若菜にあげる。」



こんな美しい笑顔で言われたら、これ以上何も聞けないじゃない。
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