月夜の太陽

心の変化

静かな口調でぽつりぽつりとエリーは口を開き話し始めた。



「私が初めてカインと出会った時、彼はまだ6歳くらいだったわ。記憶を消され、私と同じようにルセンタ・セルフィス伯爵に買われたの」

『買われたって……人身売買ですか』

「そう、伯爵は自分が気に入ったものや珍しいものを集めるのが趣味だったの。伯爵の屋敷で目を覚ましたカインは何一つ覚えていなかった…だから、私の死んだ…殺された息子の名をカインに名づけたの」

『カインは感情をなくしてしまったかのように、表情を変えることがなかったそうです。その頃からそんな感じだったんですか』



俺の疑問に答えにくそうな表情を浮かべる。


困ったような表情からどんどん泣きそうな顔に変わっていく。



「いつも笑顔で私のことばかり心配してくれるとても心の優しい子だった。だけど、伯爵の部屋に呼ばれるようになってからは私以外の人にはとても冷たい目を向け、感情を表さなくなったわ」

『伯爵の部屋には何をしに?』

「……辱めを…受けていたのだと思う。あの子は私には何も語らなかった…大丈夫だと笑顔を向けるあの子に、その時の事を思い出すような事を聞くことが出来なかった」



人身売買だけでも許されることではないのに、まるで玩具でも扱うの様に扱っていたと言うのか。


この時リオから言われた言葉が頭に浮かんだ…"悪党の基準"……セルフィス伯爵は頭の可笑しい悪党…いや、クズだ。


その時のカインの事を思うと、想像すると、沸々と怒りがこみ上げてくる。






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