月夜の太陽
直ぐに頭を切り替えられるエルグラムさんは流石だと思った。


俺は切り離して考えられるようになるまでどれだけの時間がかかったことか……。


シエル様はしっかりとした笑みを浮かべると、またきりっとした表情へと顔を変えた。



『ロナウドはデトイス国へ戻り、ヘイザス様にこの件をお伝えしてくれ。無事に辿り着けるよう騎士団に護衛をさせよう、何が起こるか分からないからな』

『お気遣い感謝致します』

『他の者は話した通りだ。ソル、私はお前のフォローをする』

『シエル様がですか?』

『私では不服か』



生きるか死ぬか、国が滅びるか否かの場だというのにシエル様は余裕の表情でまるで楽しんでいるかのように見えた。


俺にプレッシャーをかけているのかもしれない。


レイドとの戦いの時には後ろにはルナがいて、シエル様は恐らく俺がへまをしないか目を光らせているだろうから。



『不服だなんて滅相もないです。宜しくお願いします』

『万が一の時は私がレイドを殺る。奴の思いを込めてな……まぁ、そうならないことを願うとしよう』

『俺がケリをつけます』

『そうだ、お前はそのことだけを考えていればいい。他の事は何も心配要らない、独りではないのだから』



周りを見渡すと表情はそれぞれ違うにしろ、皆温かい目を向けてくれていた。


俺は独りじゃない……共に戦ってくれる人たちがいる。


余計な心配せずに自分の使命を果たすだけだ。







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