月夜の太陽

力の使い方

ルナを胸にとじ込めるように抱き、真っ白な頭で周りを見渡すと皆俺を見ていた。


どうやらシエル様はビンセントを片付けたようだ。


俺はどうだ?


レイドを片付けるどころかルナに守られ、俺が不甲斐ないばかりに大切な者に血を流させてしまった。


目の前には嘲笑うかのように顔を歪めているレイドがジワジワと間をつめてきている。


ルナは力なく息をし、だんだん弱ってきているかのように顔色が悪くなってきている。


涙が零れると同時に自分に対して、レイドに対して怒りが込み上げる。


怒り……そんな言葉では表せないほどの感情で心臓が震え、頭に血が上っている。


体に力が漲ってくる…一度ジェイド様に手伝ってもらって放出した自分が持つ限りの力……その力が理性の殻を破り外に出てこようとしている。


それでもいい……例え自分の体がそれに耐えられなくても、死んでしまったとしても、レイドを倒し愛するルナが生きてくれるなら。


そう思った瞬間なんだか楽になり、気持ちがいいほど力が一気に溢れ出た。


近付いてきていたレイドは俺の力によって吹き飛ばされ、その体は重圧な壁にぶつかるまで止まらなかった。


壁は粉々に崩れ砂が舞い、辺りは静まり返った。






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