シンデレラになりたくて~エリート専務と秘密の恋~
私も彼を見詰め返す。

二人の視線が甘く絡んで艶めいて、…はじける。

「芹沢さん…、俺、いたんだよ、あの場所に…」

「はい?」

彼の言いたい事が伝わらない。

「何ヵ月か前に、…屋上に」

「え」

屋上って。もしかして――。

「あの時も、泣いていたね。
君の震える肩を…、あの時、抱き締めてあげたかった」

「!!」

驚きで声が出ない。

そんな私にそっと専務の腕が伸びてくる。

「今からじゃ、もう、遅いかな」

ふわ、と彼の胸の中に包まれる。

遅くない。遅くなんてない。

涙がじわ、と溢れてくる。

待っていたの、こうしてもらえる日を。

こうしてあなたの匂いに包まれてみたかった。



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