子供の国
八平は、屋上で歌っていた。
心地よい風が身を包んで、すごく歌いやすい。
ノリノリで歌っていると階段を登る音がした。

「やべっ」
「俺だよ」

タンクの後に隠れると、ドアの前に遊時が微笑んで立っていた。
ホっと息を吐いて遊時に駆け寄った。

「なんだユウか」
「ははっ」

遊時は苦笑いして抱きついた。

「なんだよっ」
「えへへ♪」
「離れろっきしょいゾ」

ゆっくり遊時を引き離した。
遊時は、ほほを膨らまして「ケチ」と一言った。

「んで、どーした?」
「ハチの歌、校舎中に聞こえてたよ」
「まじかよ!」

恥ずかしくて顔を手で覆った。
遊時はクスクス笑った。

「こらぁ!また佐倉くん!?」
「あっ!」
「やっぱり!降りてきなさーい!」
「どど・・・どーしよう」

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