若恋【完】


榊さんと仁お兄ちゃんはソファーに座って黙ってわたしたちを見てる。

と、不意に何かが音を立てて空中を飛んできた。

何の音?
顔をあげた瞬間に、毅さんがグイとわたしの袖を引き目の前に立ち後ろにわたしを隠した。

パン!
弾かれたものが床に転がって、シャリリリと音を立てて回ってる。

―――え?なに?鈴?

毅さんが飛んできたものを叩き落としたんだってわかった。
転がって回ってる鈴を見る。
どうして……?


「毅、合格だ」

「そ、奏さん?」

奥の部屋の方から低い声がして。

間違いない。
奏さんの声が……

「榊、毅はおまえが見込んだ男なだけあるな」

「そうでしょう」

スーツ姿の奏さんが奥のドアの陰から姿を現し歩いてきて、榊さんの横に腰を下ろした。

< 131 / 417 >

この作品をシェア

pagetop