若恋【完】
丸眼鏡さんの骸を抱き抱えて奏さんが車を降りると、周りにいたみんなが一斉に頭を下げる。
まるで花道を歩くようにみんなの前を堂々と歩んで行く。
その後ろをわたしが歩き、榊さん、仁お兄ちゃんと続く。
「成田ドクターが到着しました。若、こちらへ」
奏さんは毅さんに呼ばれ、わたしは榊さんに屋敷の方へ行くように言われた。
涙を袖で拭って息を整える。
妹が待ってるって言われてたけど…わたし。
ひかるに会ったら、責められそうで、この世界に巻き込んでしまったことを責められそうで怖くて。
無事を喜びたいのに、会うのが怖くて足が前に進まなくていつまでも屋敷に入れずにいた。
「お姉ちゃん!」
玄関前で戸を開けるのを躊躇っていたら、いきなり後ろから抱きつかれて心臓が跳ねた。
「お姉ちゃん!」
「…ひかる」
「お姉ちゃんケガしたのっ?」