若恋【完】


夕方。



「榊、仁、頼むぞ」

「はい、若」


前後に護衛車をつけて、奏さんの実家へと走る。



いつもは話しかけてくれる榊さんも今日は緊張しているのか話しかけてこない。

ルームミラーで奏さんとわたしを見ることもない。

助手席に座ってる仁お兄ちゃんも同様で、腕組みしたまま何かを考えてるみたいで話しようにも話しかけてはいけないような雰囲気だった。



沈黙は苦手だ。



「榊さん、この辺の美味しいケーキ屋さんで車停めてもらっていいですか?」

奏さんのお母さんに…って、美味しそうなケーキをたくさん買って奏さんの実家へ。




「あれが俺の家だ」


奏さんが指差した小高い丘の上に見えたのは。
なんていうか―――お城?みたいな。
お寺みたいな?
映画でよく見る極道のお屋敷そっくりで。

あ、ヤクザ屋さんか…



「正面につけろ」

車が停められると仁お兄ちゃんがドアを開けてくれて奏さんとふたり降り立つ。


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