若恋【完】


奏さんのお父さんは細長い黒の袋を二つ手に持って縁側から庭に降りた。

奏さんも後に続いて降りる。



「わたしが負けたら認めてやる」

「親父、二言はなしだぞ」




わたしは庭に降りた奏さんとお父さん、ふたりの姿をドキドキして見つめてた。

開け放した窓から冷たい風が入ってくる。

ふたりの髪が風に流れる。


奏さんのお父さんが細長い筒状の袋を一つ奏さんに手渡した。


奏さんが袋を縛っていた紐をほどき中から黒いモノを引き出す。



「!」


わたしが竹刀だと思ってたものは、黒塗りの鞘に収まった真剣だった。

鞘を捨て奏さんがお父さんと対峙する。



「やだ、待って!」


奏さんがなんで見たこともないような優しい顔をしたのがわかって、思わず叫んで庭に飛び降りた。


「来るな!!」



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