若恋【完】


奏さんに似てる。



奏さんが歳を重ねたら白髪混じりのダンディーなお父さんみたいになるんだろうな。


黒曜石の瞳も似てて、奏さんのお父さんがわたしを見つめると緊張した。



「具合の方はいいのかね?」


冷たい声ではなく、労るような声だった。

ずっと背中を向けられていた声とは違う気がした。



「…だ、大丈夫です。ご、ご心配おかけしました…」

言うのがやっとだった。

奏さんのお父さんが目の前にいてなんて答えていいのかわからない。



「そうか。ならいい」


素っ気ない口調ではあったけど、わたしを見つめる視線は柔らかかった。



「奏、」

お父さんがフッとわたしの隣に座る奏さんを呼んだ。


「奏、大事にしてやれ」




「―――え?」


わたしは思わず間抜けな声を出していた。



「大事にしてやれ。今が一番な時期なんだろう?」


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