若恋【完】

ずっとこのまま、ふたりだけでいたい。

誰にも邪魔されないでふたりでいたい。

奏さんの腕の中にいたい。





コンコン



ふたりの時間はノックされたドアの音で唐突に終わりを告げた。


「若、組長が見えられました」

戸口に控えてたんだろう。
榊さんの声がした。



「入るぞ」

低くよく通る声がして、奏さんはわたしを放して椅子に腰かけた。

一歩一歩近づいてきた奏さんのお父さんが奏さんのそばにあった椅子に座る。



「―――りおさんと言ったかな?具合いの方はどうだ?」


低い声で言い、まっすぐにわたしを見つめる奏さんのお父さんの瞳を初めて見た。

ずっとわたしに背中ばかり向けていたから真っ正面に向かい合ったのは初めてだった。




―――奏さんに似てる



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