若恋【完】

仁お兄ちゃんがわたしを見る。わたしも仁お兄ちゃんとお母さんの顔を交互に見る。


「開けてみて」

お母さんに促されるまま紫色の小箱をそっと開けた。


「これ…」

開けた途端に、薄く蒼っぽい光が弾けた。

粒が大きい一粒ダイヤのリングが鎮座してる。



「ずっと前から奏の嫁になるひとにあげようと思ってたの」

イタズラな笑みを浮かべてお母さんが声を上げた。



「さあさ、わたしももうそろそろ出番かしら。あとでまたりおさんと舞台で会うわね。その時にはこれをはめて来てね」


「そんな大事なもの…受けとれない、です」

奏さんのお母さんが結婚した時に頂いた大事なものをわたしが貰うなんて。



「受け取ってもらえないなら窓から捨てるわよ」

「わあ、いただきます。ありがとうございます。だから大事なものを投げたりしないで!」


思わず受け取ってしまった。




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