若恋【完】
「大事なものだからりおに渡したかったんだな」
「そういうもの?」
「さあ、そういうことなんだろう?」
お母さんのいる孔雀の間を出てパーティー会場へ仁お兄ちゃんと向かい、赤いふかふかの絨毯の上を歩く。
「ぅ」
「どうした?りお?」
いきなりお腹が突き上げられて吐き気が込み上げてきてハンカチで口を押さえてレディースルームへ走った。
ケホッケホッ
「りお、大丈夫か?」
「ん、ただのつわり。吐いてしまえばもう楽になるの」
口元を拭い心配かけないように笑う。
「…そうか」
仁お兄ちゃんは心底びっくりしたらしくレディースルームまでわたしを追ってきてしまった。
わたしが大丈夫とわかると胸を撫で下ろす。
そこへ。
二つの影が入ってくるのに気づいて、わたしと仁お兄ちゃんは慌ててひとつの扉に飛び込んだ。
「逃げたらよかったんじゃない?」
「バカ、女子トイレから逃げたの見られたら変態だって騒がれるだろ」
「あ、そうか。仁お兄ちゃん変態だ」
「しっ、静かにしてろよ」