若恋【完】
「やましいことがないならこれは飲めるはずだ」
奏さんが森内狸の震えて今にも落としそうになってるグラスを指ごと押さえた。
「覚えがないならこれを飲んでみろ。ただの栄養剤だ」
森内狸の顔が鬼の形相を帯びていく。
目が血走ってギリッと噛み合わせた口元からは強く噛み締め過ぎて切れた血が滲んでいた。
狂犬にも似た物凄い荒い息を何度も吐き出す。
「飲めるものなら飲んでみてください。あなたが放った刺客が持っていた薬です」
ざわっ
榊さんの冷静で静かな声はシンとした会場内に重く響いた。
さざ波のようにざわめきが広がり中心にいた奏さんたちを声を殺して見つめていた。
「さあ、飲んでみてください。あなたが渡した薬でないと言うのなら、ただの栄養剤です」
緊張で手に汗が滲む。
会場内の視線がすべて奏さんたちに注がれてる。