若恋【完】
「森内、おまえは俺が若い頃から支えてくれた」
奏さんのお父さんが榊さんを下がらせて森内狸の真正面に立った。
森内狸の持つグラスは奏さんに支えられたままそのままだ。
「俺の何が欲しかったんだ?富か?名声か?」
狂犬になってる森内狸の濁った瞳は奏さんのお父さんの言葉には反応を示さなかった。
「これを飲め、飲んでみろ」
もう森内狸が拒否することはできない。
手に持ったグラスの中身を飲み干すか、暗殺を白状するか。
「………」
震える指でグラスを口元に寄せる。
口を開け、
「馬鹿野郎!!こんなの飲めるか!!」
雷が落ちたような耳が聞こえなくなるほどの叫び声を上げた。
奏さんの手を振り払い、一也さんの押さえる体も蹴り飛ばし拓也さんの羽交い締めにした体も反転して返し、手負いの猛獣のように暴れまくる。