危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜
2階で、涼の部屋のドアがバタンと閉まる音がするまで、私は章さんに抱きすくめられたまま、じっとしていた。


それは、ほんの数秒かそこらの事だったはずだけど、私にはその何倍にも、何十倍にも感じる長い時間だった。


「放してください」


「綾子ちゃん、今のは承諾と受け取っていいのかな?」


「承諾? 何のことですか?」


「まさか、忘れたなんて言わないよね? 金曜の夜に、僕が出した提案を……」


ああ、“付き合ってあげてもいいよ?”ってやつね。


「ごめんなさい。今はそんな気になれないので……」


「涼の事なんか、忘れちゃえよ」


「え?」


「俺が忘れさせてやるよ」


そう言って章さんはフッと笑うと、顔を近付けてきた……


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