危ない家庭教師〜美男兄弟の誘惑〜
「放してください。涼君が来るから……」


「そう? それは好都合」


「え?」


章さんは、意味不明な言葉を呟くと、私の背中に回した手にグッと力を入れた。


「や、やめてください」


私は章さんに抱きすくめられた格好になりながらも、章さんの胸に手を当て、抵抗を試みた。


「あいつに見せ付けてやろうよ?」


章さんが、耳元でそう囁いた。


涼に見せ付ける……?

それはまるで、悪魔の囁きのように私の中に浸透した。


そうよ。涼なんか、涼なんか……


私は手に持っていた鞄を床に落とし、章さんの背中に手を回し、目を閉じた。


涼が見てる……


目を閉じていても、涼の突き刺さるように鋭く、冷たい視線を私は感じていた。


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