あの夏を生きた君へ
彼はほんの少し距離をあけて、あたしの隣を歩く。
ゆっくりと、でも確実に空は明るくなっていく。
夏の夜は短い。
「明日は神社まで行ってみよう。」
「…………。」
「怖いのか?」
「っなわけないじゃん!」
キッと睨みつけると、彼は可笑しそうにクスクスと笑う。
「…ただ、少し不安なだけ。」
「不安?」
「小さい頃、神社へ行って迷子になったの。」
あれは、小学校三年生。
あの時も夏だった。