Addict -中毒-
彼の赤い舌が少しだけ出て、私の這わした指先にそっと触れる。
生々しいまでのその感触に、指先から電流のような快感が私の全身を走った。
すぐに手を離そうと思った。
ここでは絶対にだめ。
だってここは蒼介のうちだもの。
それこそ私は徹底的に蒼介を裏切ることになる。
けれど意思とは反対に、私の指先は彼の舌の先の感触を楽しんでいる。
彼が僅かに口を開け、私の手を握ると、その舌を指先から付け根へと這わせた。
ぞくぞくするような感触に、私の腰から力が抜けていくのが分かった。
「啓人………」
そっと彼を呼んだが、
「ん?」とのんびり聞いてきて、それでも彼はその行為をやめようとはしない。
蒼介への罪悪感と、それでもこの快感に溺れていたいという気持ちが混在して、私の中が奇妙に歪んでいた。
「けい……」
もう一度名前を呼ぼうとしたときだった。
ピンポーン
無機質なインターホンの音が部屋中に鳴り響き、私ははっと我に返った。