Addict -中毒-


今更小娘のような感情が蘇り、私の涙腺がちょっとだけ緩む。


慌てて布団で顔を隠すと、


「要らない。こんな時間に食べると太るし」とくぐもった声で答えた。


「なーん。拗ねてんの?」


彼の重みを体に感じて、私は布団からちょっとだけ顔を出した。


彼が私の上に乗りかかり、にこにこ顔で私を覗き込んでいる。


「拗ねてなんかないわよ。早く決めたら?」


そっけなく返しても啓人はめげずに、私の頭を撫でる。


「食わないんなら、何か飲んだら?アルコール入れるとぐっすり眠れるぜ?」


そう言って私を抱き起こした。


「ちょっと」と怒ってみせるものの、彼は気にした様子じゃなく私に軽く口付けをする。


「一緒に選ぼう?」


まるで子犬のような愛嬌のある笑顔で言われ、私は小さく頷くしかなかった。


いつも……啓人に流されるままだ。


結局啓人はオードブルを一品と、私はシャンパンを注文することになった。


届けられたオードブルを彼が食べながら、その隣で私はシャンパンを飲み……


情事の余韻が残った緊張した気持ちと強張った表情を隠すため、私はいつもよりよく喋った。


そんなわけだからいつもより早く回ったアルコールに、いつしか私は本格的な眠りに入っていた。








―――目が覚めたとき


隣に彼の姿はなかった。







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