Addict -中毒-
「綺麗なのに気さくな人だね」
お風呂をあがった後、先にベッドに入り込んでいた蒼介が、切り出した。
もちろん萌羽のことを言っているのだ。
「ええ。それにとても素直だし、優しいのよ」
と付け加えると、蒼介は穏やかな笑みを浮かべていた。
彼が枕元のナイトテーブルの明りを消して、布団にもぐりこんだところを見計らって私もベッドに入った。
少しだけ蒼介と距離を開けるように横たわると、彼の腕が私の上に伸びてきた。
私がちょっとだけ目を上げると、蒼介が照れくさそうに顔を赤らめて私の顎を少しだけなぞった。
その瞬間―――
この間の台風の夜のシーンが鮮明に私の脳裏に甦った。
啓人の熱い視線。熱い指先。熱い吐息。
忘れたいのに―――忘れたくない……
あの溺れるような激しい夜を―――
私は顔を背けると、
「ごめんなさい。今日は気分じゃないの」そう言って布団を引き上げた。
「そっか。ごめんね」
と蒼介が申し訳なさそうに手を引っ込める。
いえ
悪いのは私。謝らなければならないのは私―――
ごめんなさい
心の中で何度も謝って、私は目を閉じた。