Addict -中毒-
急に自分が惨めに思えてきた。
現実をまざまざと見せ付けられたようだ。
私はやっぱり彼の数多居る遊び相手の女の一人に過ぎず―――
扉一枚隔てた会場に、彼が唯一求める女がいる。
私は本当にタバコのときのお話相手に過ぎなかったのだ。
「そんなつもりはないわ。彼からそんなお誘いの言葉を聞いてないもの」
私は唇を噛み締めて、ちょっと強く言うと会場に繋がる扉に手を掛けた。
「嘘よ!」
アキヨはそれでも食い下がる。
「いい加減にして。私は本当に何もないわ」
うんざりしてちょっと振り返ると、アキヨは悔しそうに唇を結んで眉を寄せていた。
あなたも誘われなかったみたいね。
でもその方がいいわよ。
あの男に溺れる前に―――
引き返せると思ったけれど、私はもう遅い。
どっぷりと彼の恋の罠にはまってしまった。
月下美人
私は中毒のように彼の虜になり
そしてその恋は一夜のうちに散っていくあの儚い花のように
終わったのだ。
運命なんて言った自分が
バカみたいだ。