Addict -中毒-



私は伊達紐を取り外すと、腰紐も解いた。単衣長着姿がさらりとさわり心地のよい長襦袢(ナガジュバン:着物と同じ丈の下着のこと)を滑って、肘で止まる。


合わせ目が解けて、白い長襦袢が見えた。


啓人が目をまばたいて私を見上げていたが、私はその格好のまま啓人の頬を引き寄せ、唇を重ねた。


「ガキだと思ってる男に、自分からこんなことしない」


額をこつんと合わせて目を閉じると、彼は目だけを上げて、


「そりゃ嬉しいな」と笑った。


私は―――個人的に良く笑う男の人が好き。どんなに器量が悪くても、その笑顔だけで一割増素敵に見える。


昔からそうだったけれど、啓人の笑顔は―――特別。


意地悪く笑うのも、皮肉そうに笑うのも―――少年のように無邪気に笑うのも、





彼の笑顔は特別に――――すごく惹かれるのだ。





啓人にキスをされて腕を引かれると、私はベッドに沈んだ。彼が靴のままベッドに覆いかぶさってきて、また私に口付けを落とす。


口付けが頬に移動して、それから顎のラインをなぞり、首元に降りてくる。


思わず甘い吐息が出て首をのけぞらせると、啓人は口付けの合間に、


「ねぇ紫利さん。プレゼントちょうだいよ」なんて言ってきた。


「プレゼント?私はホストを相手にしてるのかしら?」


彼を見上げてちょっと指で顎を押し上げると、






「そうじゃなくて。





俺、今日誕生日なんだ―――」





ちょっとボタンが外れたワイシャツの合間から、啓人のロザリオが見えた。


その中央の石は―――12月の誕生石、ターコイズだった。


水の中に綺麗なブルーの絵の具を落としたような―――そんな色が目いっぱいに映って、私は目を開いた。





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