Addict -中毒-
そう言えば背も高かった。
きりりと伸ばした背筋がスマートな姿勢だったことを思い出す。
いかにも育ちが良さそうな―――上流階級のお坊ちゃまを思わせていた。
だけど生まれついてのセレブが身に纏う、あの独特で嫌味な高級感は微塵も感じられなかった。
彼は―――何者だろう?
「モデル!?いいなぁ。連絡先交換した?」
「するわけないでしょう?」
私は呆れかえって、吐息をついた。
でも…そうね―――
あの場で私がすぐに連絡先を差し出すような女を―――
彼はご所望ではなかった気がする。
だから教えなかった、というわけではないけれど。
「今度連れて行ってよ。会えるかもしれないでしょう?」
「今度ね」私は曖昧に返事を返し、再びカップに口を付けた。
あの男の話題を出したのは失敗だったわ。
もう、忘れたいのに。