Addict -中毒-
090-xxxx-xxxx
見知らぬ番号だった。
一瞬、シーツの上に残してきた口紅のメッセージを思い出す。
彼が早速掛けてきたのかと思ったからだ。
だけど良く考えたらそんなことありえないのに。
どうせ彼にとって、私なんて単なる暇つぶしだろう。
忙しそうにしていたのに、わざわざ掛けてくることはない。
―――と、思っていたのに、
私の心臓はドキドキと高鳴った。
たっぷりと時間を掛けて、やがて
「―――……はい」と恐る恐る電話に出てみた。
『酷いな。帰っちゃうなんて』
聞き覚えのある低い声に―――
私は目を開いた。
ついさっき話した声だ。聞き間違えるはずがないし。
携帯を握る手にじっとりと汗が浮かんだ。
たかが電話なのに、男相手にこんなに緊張したのは初めてだった。
『この金、どーゆうつもり?』
啓人の声は僅かに険を含んでいた。
それすらも色っぽくて、私は僅かの間返答に窮した。