Addict -中毒-
「どうゆうつもりも何もないわよ」
わざとそっけなく言ってやる。
番号を残してきたのは私なのに、随分な態度だと思う。
だけど彼はそれ以上気を悪くしたようではなかった。
『貰いすぎだよ。この部屋こんなに高くないよ?』
「そ。じゃぁあなたのお小遣いにしなさい」
『小遣いなら足りてる。俺は金より紫利さんが欲しいんだけど。俺は金で買われたの?そんなに大したことしてねぇのに』
何気ない彼の一言にドキリと大きく心臓が波打った。
でも同時に、苦い思いがこみ上げる。
どんなにお金を積んでも、彼の心が手に入らないことを物語っていたから。
『返すよ。あとハンカチも』
「ハンカチ…」
すっかり忘れていた。
そう言えば私は彼にハンカチを貸していたっけね。まぁ強引に奪われたとも言えるけど。
「あのハンカチはあなたにあげるわ。お金も」
『いいの?じゃぁハンカチにイタズラしちゃおっかな♪』
彼は意地悪そうに低く笑った。
「返してちょうだい」
呆れたように額を押さえると、彼はふっと笑った。
『ねぇ、今度デートしようよ。いつものバーじゃなく、俺のお勧めの店連れてくから』