Addict -中毒-
「いつもの着物は?姉さんたくさん持ってるじゃない」
「たくさん持ってるけど、たまには……」
って言っても、会うのはこれで三回目だけど。
着物は好きだけれど、若い彼の隣を歩くには少し不釣合いな気がしたのだ。
クラブのホステスと、歳若いツバメ。
そんな風に周りから見られるのは嫌だった。
彼の周りにいる女たちはいつも色とりどりの綺麗な洋服に身を包んでいた。
ピンクや黄色、白やオレンジ。淡い光の波の中、まるで羽衣のようなフワフワした生地をひらつかせて。
彼の好みがそうなのか、それともたまたまなのか。
私には分かりかねたが、それでも彼の隣を歩いていて可笑しくない女で居たい。
思えば随分久しぶりの感覚だった。
誰か一人の男のために、洋服を選ぶ自分というものが。
「これなんかいいんじゃない?」
萌羽は一枚の黒いV開きニットを手に取った。
「ああ、それねぇ。私も気に入ってるけど、胸元が深く開いてるから中にキャミソールかベアトップか何か着ないと…」
そう言いながら、洋服の波の中を探る。
「何言ってンの!これ一枚だよ」
萌羽は私の体にそのニットをあてがった。