野球少年と私



「…幸せになんなかったら
承知しねーからな。

竹本が東堂の事を泣かせたりなんかしたら、俺は無理にでも竹本から東堂を奪いに行く」


『滝口…』




何で?
何でそんなに優しいの?

アナタをフった私なのに


そう考えると自然に涙が溢れてくる。





『ありがとう…』



ありがとう滝口。

…こんなワガママな私で
ごめんね?



「……」



滝口は返事をしない。

ただ…下に俯き、顔を片腕に埋めていた。



『滝口?』



「うるせー…
泣き顔なんて見られたくねーんだよ」







滝口は震えていた。



見なくても分かる、


きっと目を真っ赤にして
泣いているだろう…と。





「…行ってこい」



背中をポンと押された。



『…うん』



ドアに向かって歩き出す。


私は、教室を出る直前に立ち止まり滝口に言った。








『…好きになってくれて
ありがとう』



こんなにも、誰かに好きになられた事なってなかった。





「…おう」



滝口は、ニッと軽く微笑んだ。






私は、
教室を出て走りだした


ただ、愛しい彼の所へ。




NEXT...
< 32 / 39 >

この作品をシェア

pagetop