俺はカノジョが泣くのを3度見た【短編恋愛ショート版】
「カッーート!」

メガホンからカノジョの声が響いた。

あぜんと固まっている俺!

「やっぱり私の見込んだとおりだったわ。深瀬君は私のイメージにハマってた」

カノジョの声とともに、向井はすくっと立ち上がり、鞄から薄いノートパソコンを取り出した。
デジタルビデオカメラを手際よくつなげる。

「イメージにハマってたって?」

俺の疑問に答えが帰ってくる様子もなく、PC画面には、すぐさまついさっきまでの、上半身裸の俺と向井がうつし出された。
向井は、手際よくその動画に明るさと色調調整のデジタル処理を施した。
「タイトルは、第一回生BL激場で!」
カノジョが的確に指示を伝える。
タイトル画面も挿入し、全体の長さの微調整もする。効果音もつける。
すべての編集作業を、向井は三十分もせずに、難なく処理し終えた。
「これでネットにアップするわよ!」
「ネットにアップ?」
またしても、俺の質問はスルーされ、向井はカノジョの命令にあわせ、黙々とパソコン作業を進めている。

まさか、ネットにアップとは、全国津々浦々の人々が、今の俺の動画を視聴することが可能と言うことなのか?

「アップ完了しました」
向井が、パソコンから手を放し、ホッとした表情でカノジョに向かって言った。

俺と向井の裸のからみを、そのまま顔にボカシも何も隠さないで、公開してしまったのかっっ!

カノジョがパソコン画面の動きを指差した。
「あ、アクセス入った!」
俺も、パソコン画面を覗きこんだ。
「増えてる!増えてる!一気にアクセス数が増えてる!」
カノジョが興奮した声を上げた。

健全なノーマル男子高校生のはずの俺が、上半身裸で、同じ男子に後ろから抱きつかれ、胸をまさぐられ…

見知らぬボーイズラブ愛好家に、いや、この地球上のインターネットにアクセスできる全世界的な人々に、何度も何度も再生され続け、

100万アクセスだとぉおおお!!!


< 6 / 36 >

この作品をシェア

pagetop