ラヴァーズ
俺は、その告白を聞いて、ただ色んな絶望が胸を容赦なく貫き、俺を再起不可能にする勢いで広がっていくのを感じた。あぁ、だめだ、落ち着け…

いったい雪夢に何が起きて、こうなったんだろう。

華月が隣にいなかったらきっとこの理不尽であり得ないほど非道い仕打ちに怒り狂って泣き叫んでいただろう。

雪夢のお母さんはすべてを話終えたあとから変わらずずっと俺をまっすぐ見つめてい
た。まるで、俺になにかを期待しているようでもあった。そして、逆に俺を恨んでもいるような、そんな顔つき。

「雪夢はね、君のことが大好きだった」

「…………知っています」

そう答えると、雪夢のお母さんは面食らったような顔をして、すぐに泣き笑いのような苦笑をその、疲労が滲んだ顔に浮かべた。

「なら、あってあげて」

君には辛い思いをさせてしまうかもしれない。

それでも、君がそばにいてやって欲しい。

俺はふいに涙があふれでそうになった。それを留めるのに必死だった。うつむいて、唇をキツく縛って、握りしめた拳に、華月の真白い手が重なるのをどこか他人事のようにみていた。

「…………辛いですね」

そう呟く俺の声も、

どこか他人事めいていた。


でも確かに、雪夢は、すぐ近くにいるのだ。

会わないなんて選択肢は、まず始めっからあるはずがなく、

俺は拳に込めていた力を抜き、顔をあげて苦笑した。

雪夢の母さんが、哀れんだように俺を見て、辛そうに口の端を歪めて笑った。

無関係な華月が、一番辛そうだった。






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