香桜~かおりざくら~
桜の出会い
4月1日

 深く深く深呼吸する。

「-やっぱり私、かわってるのかなぁ……」

ぽろっと落とすようにつぶやく
この場所…スキだな。
きれいな黄緑色の草が足元に寄り添う様に生えていて、目の前には…
そう
大好きな桜。
香桜。
っていっても勝手に私が付けただけだけど。

「うん。かわってる。」

背後から声がした。
その0.5秒後には私はすでに体を180度回転させていた。

「…だれ?」
「僕?」
「他に誰がいるの?」
「だよね。分かってる。」

―変な奴…
女の子みたいに華奢(きゃしゃ)な体つき。
声は完全男の子
大きすぎる丸ブチメガネの奥にはきれいなアーモンド・アイ。
寝ぐせなのかもともとなのか分からないくねくねの髪の毛。
かっこいいというより、かわいい顔。

「僕は山野木斗(やまのもくと)14歳」

彼は簡潔に年齢と名前だけ告げた。

「あ、そう」

私も簡潔に答える。

「ねぇ、なにしてたの?」
「…別に」
「この桜きれいだよね。」

…こいつ なんなんだ。

「良いにおいするよね?」
「え…」
「ビンゴ?」
「は?」
「桜のにおい、嗅いでたんでしょ?」

そう、そうだ。
私はさっきまでこの桜のにおいを嗅いでいた。
でも大体普通の人は桜のにおいなど分からない。
感じない。
でも私は感じる。
私は人とは違う。変わっているのだ。

「なんで…」

なんでこいつにバレてるの…!?
もしかして…

「僕にも分かるんだぁ…桜のにおい」
「…うそ……でしょ?」

ここに…わたしと同じ種類の人間がいる…?
この桜を理解している…?

「ど、どんなにおい…?」

思わず聞いていた。
実は、私はまだ見つけられていない…。
この桜のにおいを表す言葉を…

「ん~と…そうだなぁ……少し熟しすぎた林檎のにおい…―?」

 !!!!!

「そう!そうそうそう!それそれ!!!」

たぶん普通の人なら耳をふさぐほど大きな声だっただろう
だってここにいたんだ…同電波の人間が…!!
けれど彼は笑顔で首を左横に45°まげてみせた。
そう…普通ならばここで笑顔は出せない
でも彼は笑ってみせた
だって、彼も私も普通じゃない



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