朝が待てなくて

「運転手さん、鳥取に行ってたんだって」


「ふうん…」


むいてくれた梨をフォークで刺す。


かじるとシャリッて音がして、果汁が口の中に甘く広がった。




「元気そうだった?」


「うん、よく日に焼けて真っ黒だったよ」




泳ぎに行ったのかな?


そういえば、樹はどんな夏を過ごしたんだろう…?


自分の報告をするばっかで、樹の日々をわたしは知らない。


もう彼女とか出来てたりして…


一緒に海に行った…の?




喉の奥が熱くなりかけて、わたしは慌てて梨を飲み込んだ。


よく冷えた梨がその熱を冷ますように喉元を通り過ぎて行く。

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