朝が待てなくて

樹の会社に着いて事務所の扉からそっと覗くと、彼が他のドライバーの人と談笑しているのが見えた。


いつでも、誰といても楽しそうなんだよね、樹って。


屈託のない笑顔は誰かれなく向けられる。




「あのぉ…」


「おっ」


声をかけるとすぐに気づいてくれて


「いーよなぁ、若くて可愛い彼女がいるやつは」


なーんて冷やかされながら出て来てくれる。




メチャ照れながら


それでももう『そんなんじゃないっすよ』なんて否定はしないでいてくれるところがうれしい。


わたしだって『え、子供じゃん』とは言われなくなった。


マスカラだってもうダバダバにならずに塗れるし


まつ毛を上げてうるつやリップをひと塗りするくらいだけど、それでも1割増し程度には大人っぽく見える。はずだ。たぶん。


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