朝が待てなくて

車の中にジャケットを置きっぱなのか、薄着の樹がジーンズのポケットに両手を突っ込んだ。


「あ、ありがと…」


「ん」


こっちを見上げて、樹が今ニコニコッて笑った。


わ……




「風邪ひくなよ」


「うん」


「じゃ…な」


ちょっと密やかな声でそう言うと、彼はまた大きく片手を上げて、トラックへと戻って行った。





夜の街にエンジン音が響き、何の迷いもなくトラックが滑り出す。


それを見送ってから、わたしはソッコー郵便受けに回収に走った。


お守り、お守り♪



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