朝が待てなくて

「樹クン優しいからなぁ」


とサホリンが言った。


「痛々しい元カノを守ってあげたくなっちゃうかも、だ」


「やだよ、そんなの」


わたしの代わりにミャンマーが悲痛な声をあげる。




「震える彼女を抱きしめたら、昔の記憶がリアルに呼び覚まされちゃったりして」


「だから、やだって、それ」




そんな二人のやりとりを黙って聞いているわたしに、サホリンが言った。




「樹クンもイヤだったから、真琴を部屋に誘ったんじゃないの? そんな気持ちのまま帰りたくなかったんだよ、きっと」


「そっかぁ……!」


ミャンマーが明るい声を出したけど、


裏を返せば、樹の心がそれほど乱されていたってことだ……。


< 563 / 771 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop