朝が待てなくて

長い沈黙のあとで――


「あ、今だから」


二人のそばに立ち尽くすわたしを見あげて、不意に大淀が言った。


樹の上に馬乗り状態になったままで。




「え?」


「クツ脱いであがっちゃえ、ってやつ」


「あ、ああ、うん」




そのときになって初めて、自分が土足のまま部屋にあがっちゃってることに気がつく。


あわてて玄関にクツをそろえて脱ぎ、そのままトコトコと部屋の一番奥まで行った。


美里さんを目撃したあの窓のとこ。




わたしがそこにペタンと腰を下ろすのを見届けてから、大淀は立ちあがる。


そうして無言のまま部屋を出ていった。




その背中を見送りながら、彼の優しさで胸がいっぱいになったよ。




大切な想いをありがとう……。
ゴメン……ね、大淀。


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