HOPE
受験が終わり、平野に会う事もなくなった。
最後に会ったのは、彼の合否の結果発表の日だ。
結果は見事に合格だった。
あれだけの短い期間で猛勉強して、志望の大学に合格してしまうのだから、本当に凄いと思う。
私も大学が決まり、ようやく一息付ける所だが、まだ早い。
何しろ今日は、由佳先輩に会う事になっている日だからだ。
私は今日という日を待ち侘びてもいたし、恐れてもいた。
学校の校門で、琴峰と待ち合わせる事になっている。
休日の昼下がりの校舎は閑散としていて、校庭や体育館から僅かに部活動の掛け声が聞こえて来る。
一台の車が私の横に停まった。
硝子窓が開き、琴峰が顔を出す。
「乗って」
「はい」
ドアを開け、彼女の隣の助手席に座る。
そして、車は走り出した。
車は二十分程走り続け、住宅街のとある一軒家の前で停まる。
琴峰は車から降り、玄関へ向かった。
私もそれに続く。
「あの……御両親は?」
「両親は、仕事で殆ど家には帰っていないわ」
用意されたスリッパを履き、由佳先輩の部屋の前へ案内された。
縦開きのドアには、由佳と書かれた木版が掛けられている。
琴峰は軽くドアをノックする。
「由佳。天道さんが来てくれたわよ」
一切の物音がしない。
本当に、この部屋に由佳先輩はいるのか、そんな疑問が浮かぶ程に静かだった。
「琴峰先生。ちょっと、外してくれませんか?」
「分かったわ」
彼女も理解しているのだろう。
自分では、由佳先輩をどうにかする事は出来ない。
ならば、この場では私に由佳先輩を託すしかないと。
「由佳を……お願い」
そう言い残し、琴峰は俯いて部屋の前から離れて行った。
私は軽く部屋のドアをノックした。
「由佳先輩、私です。天道です。久しぶりですね」
やはり、部屋からは一切の応答がない。
「あの……聞こえてるのなら良いんです。私の話を聞いて下さい。あの日、私が由佳先輩に大怪我を負わせてしまった日。あの時の私は、本当にどうかしてました」
最初に言っておきたかった。
最後に会ったのは、彼の合否の結果発表の日だ。
結果は見事に合格だった。
あれだけの短い期間で猛勉強して、志望の大学に合格してしまうのだから、本当に凄いと思う。
私も大学が決まり、ようやく一息付ける所だが、まだ早い。
何しろ今日は、由佳先輩に会う事になっている日だからだ。
私は今日という日を待ち侘びてもいたし、恐れてもいた。
学校の校門で、琴峰と待ち合わせる事になっている。
休日の昼下がりの校舎は閑散としていて、校庭や体育館から僅かに部活動の掛け声が聞こえて来る。
一台の車が私の横に停まった。
硝子窓が開き、琴峰が顔を出す。
「乗って」
「はい」
ドアを開け、彼女の隣の助手席に座る。
そして、車は走り出した。
車は二十分程走り続け、住宅街のとある一軒家の前で停まる。
琴峰は車から降り、玄関へ向かった。
私もそれに続く。
「あの……御両親は?」
「両親は、仕事で殆ど家には帰っていないわ」
用意されたスリッパを履き、由佳先輩の部屋の前へ案内された。
縦開きのドアには、由佳と書かれた木版が掛けられている。
琴峰は軽くドアをノックする。
「由佳。天道さんが来てくれたわよ」
一切の物音がしない。
本当に、この部屋に由佳先輩はいるのか、そんな疑問が浮かぶ程に静かだった。
「琴峰先生。ちょっと、外してくれませんか?」
「分かったわ」
彼女も理解しているのだろう。
自分では、由佳先輩をどうにかする事は出来ない。
ならば、この場では私に由佳先輩を託すしかないと。
「由佳を……お願い」
そう言い残し、琴峰は俯いて部屋の前から離れて行った。
私は軽く部屋のドアをノックした。
「由佳先輩、私です。天道です。久しぶりですね」
やはり、部屋からは一切の応答がない。
「あの……聞こえてるのなら良いんです。私の話を聞いて下さい。あの日、私が由佳先輩に大怪我を負わせてしまった日。あの時の私は、本当にどうかしてました」
最初に言っておきたかった。