坂道
花火大会は終わった。



人で賑わっていた縁日も静まり返り、辺りは静寂に包まれた。



六人は最後の夜を惜しむように、バンガローで昔話に花を咲かせた。


全員が、過ごしてきた20年間を全て吐き出すように話し続けた。


それぞれの人生に、六人は時に笑いころげ、時に真剣に聞き入った。



裕美にとっては、それは夢のような二日間であった。


裕美は母親の仕事を手伝っていたので、夜更かしをしたことがない。


朝から晩まで、一日中遊び続けたこともない。



そんな時間を、本来なら終わってしまったこの時に、こうして味わうことが出来るなんて思いもしなかった。


あの頃は、いつまでも続くと信じて疑わなかった仲間たちとの時間が、こうして戻ってくるなんて思わなかった。



こうした幸せな時間を、命を賭して与えてくれた両親に、裕美は心の底から感謝した。


そんな優しい両親が待つ天に召されることは、決して怖くない。



しかし、この世から身が消滅するのは、とてつもなく怖い。


こんなすばらしい仲間たちの中で、自分が思い出という名の過去になってしまうのが、とてつもなく怖い。



暖かい仲間たちの顔を、裕美は忘れまいと目に焼き付けようと、瞬きもしないほどに見続けた。


仲間たちの心中に宿る自分の記憶が風化していこうとも、自分の中では、仲間たちのことは決して忘れたくなかった。



そんな裕美の気持ちを、友人たちは分かっていた。





そしてその思いも、全員が同じであった。
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