坂道
下級生も教室に戻った今、辺りには誰もいなかった。


ただ春の心地よい風だけが吹き抜け、ケンジと裕美の今日で最後となる制服の裾を揺らした。



ケンジはその腕の力を緩め、そして裕美と離れた。


ケンジはあの日以来はじめて会う裕美の顔を見つめながら、笑顔で言った。


「会いたかった。」


「私もだよ。」


裕美の顔に笑顔が溢れた。その笑顔を見てケンジは、心からいとおしく思った。



この数ヶ月間、本当に会いたかった。
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