Last Valentine
『パパさん…苦しそうだった?』

うん。
正直俺は目を覆いたかった。
親父のガンは大腸から体中に転移し、食べ物もろくに食えず、太いチューブを沢山つけて、ほとんど骨と皮の状態で死んでいった。

でもあの時泣いてる母親に言った最期の言葉。

『愛してる』

親父は最高にかっこよかった。
俺は死ぬまで親父を尊敬する。
そして親父のように愛してる人の横で俺も人生の最期を迎えたいと思った。

『すごいね。プーチャンのパパ。』

うん。

『じゃぁあたしが死ぬ時はプーチャン横にいてね♪』

笑える。
だって少なくともこのままいけば俺の方が絶対早死に。
タバコはやめたけどさ。
ナギサは100歳まで生きるよ。

『それはやだ。だって私のコト知ってる人もうこの世にいなそうだもん。それって寂しくない?』

確かにそれはあるかも。
じゃぁ俺が頑張ってそれまで生きるよ。

『いやそりゃ無理でしょ。』

ハハハ。
笑えない。
自分で言うのは余裕だけど人から早死に宣告されるのは案外傷つくのな。
学んだよ。

俺らはそこで電話を切った。
ちょっと妄想にふけった。
ナギサが奥さんになってくれたら毎日楽しいだろうな。
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