【短編】失った温もり
「謝ることなんてなにもないだろ?」


出来る限りの笑顔をもって彼女を見つめる。


「そう……ですね。本当にお世話になりました」


目元を擦り、深々とお辞儀をして彼女は俺の前から消えていった。


その後ろ姿を目で追ってしまう。
“背中を追い掛けるな”彼女にそう偉そうに言っておきながら。



この後悔は、一体いつになったら消えるのだろうか。


喉の渇きを癒すために、後悔と言う名のウォッカを飲み干す。


胃がチリチリと焼けそうだ。

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