【完】ラブ☆パワー全開
「綾乃さんが言ったわけじゃねーぞ」
私の心の中を読んだかの様な楠木の言葉にドキリとした。
「俺が見てただけ」
「別に……。てか見てないで仕事すれば?」
週に1~2回、仕事帰りに
仁のバイト先に寄る綾乃さん。
付き合っていて、
彼女って肩書もあって、
それだけで仁の隣にいれる最高の立場のくせに。
わざわざバイト先にまで来なくたっていいのに。
それでも、心の底から嫌いになれない。
それなのに綾乃さんを認められない。
そんな自分自身の勝手な想いに苛ついて、綾乃さんに嫌味を言ってしまう。
楠木は、目敏くそれを見つけては怒るんだ。
「お前ねぇ。綾乃さんはいい人だろー」
いい人かもしんないけど。
私は、ずっと仁が好きだったんだよ。
それなのに簡単に横から奪われてさ。
負け惜しみかもしれないけど……それでも。
ムカつくんだもん。
綾乃さんも、私自身も。