エリートな彼は溺愛を隠さない
彼女を乗せたタクシーの赤いテイルをボンヤリと見詰めて、俺はしばらく動けなかった。

この一時間ほどの間に起こった全ての事が、まるで映画か何かのようで、自分の事の様には思えなかった。

――ずっと好きだった。
ごめんなさい―――

何故、謝る?
俺に惚れたのが、まるでいけない事の様に。

じゃあ俺も綾芽を好きになったら駄目なのか?

…そんな訳ないだろ。

身分違いか何かじゃあるまいし。

じゃあ何なんだよ。

目的、とか、会話、とか。


俺は、はあ、とため息をつくと、またトボトボと歩き始めた。


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