【短編】保健医の憂鬱
落ち着いた保健室
長瀬の隣に小松原が座って
私は小松原にコーヒーを差し出した


「で?何しに来たの?」


小松原とは大学時代からの腐れ縁
この学校で唯一私の本性を知る友人だ


「あぁ、いや。
ちょっと用事あったんだけど
また今度でいいわ。」


ちらっと長瀬を見た小松原


どうやら
長瀬がいては出来ない用事らしい


なんだ?


「いいですよ?
煙草ですか?
僕先生方が煙草吸ってるの知ってますし
高宮先生がここのトイレで
吸ってるのも知ってます。

だから遠慮なくどうぞ。
あ、もちろんチクッたりなんかしませんから。」


最後にニコッと長瀬が笑顔を見せる

私と小松原は思わず見つめあってしまった
そして
感服したように小松原が笑いだすので
私もつられて笑った


「お前、長瀬って言ったけ?
サンキューな。おかげで
午後からも仕事になりそうだ。」


そう言って私に手を差し出す小松原

「なによ?
あんたまた煙草せがみに来たの?」


こんな風に小松原に煙草を渡すのは
もう数度目だった

「いいじゃねーか。
後で、カートンで返すから。」

まぁ
こいつの言う事は嘘ではない
忘れたころにカートンで煙草を持ってくる


「ったく。」

舌打ちをしながら
常備してる煙草の中から一箱渡した
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