【短編】保健医の憂鬱
小松原はさらに爺に
追い打ちをかけた


「先日は鈴がお世話になったそうで。
ご迷惑をおかけしました。」


その言葉に
布団事件があった料亭を思い出した爺は
顔を白黒させる


「ああ、それと
奥様の華道の個展も拝見いたしまして
素晴らしい作品ばかりで感動しました。」


奥様という言葉は
爺にとってかなりのダメージだったらしく

「それはよかった。
では。」

とだけ言って
よろよろと爺はその場を後にした


そう言えば
帝氷山画伯の奥方は
華道の家元でかなりの恐妻だと聞いた事がある


なるほど
その情報をうまく使ったわけだ


「やるじゃん。」

小さく耳元でつぶやくと
小松原は「とーぜん。」といって
ドヤ顔を見せた


これで
エロ爺は私を諦めてくれるだろう


これからは
気をつけなければ


訳のわからない抽象画が
一千万円~という値札を見て憤慨したところで
小松原と一緒にフロアを後にした
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