幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
あたしはギュッと唇を噛み締めた。


絶対にやり遂げてみせる。

ローズマリーに光を返すんだ。


自分一人で修道院へ入るとなると、こっそりと潜り込むしかない。

格式の高い修道院は、身元の確かな者しか受け入れないからだ。


あたしは白馬のタペストリーを、織り機から丁寧に外した。

サラマンダーの物より、二回りくらい大きいだろうか。


エーンバル


海の波から生まれた異界の馬だ。

普通の馬の何倍もの速さで、陸も水の上も駆けていく。

乗り手は魔力に守られて、決して傷つく事はない。

ただし、エーンバルが召喚できるのは夜の間だけ。

日の出と共に波に還って行く。

もしもその時に海の上にいたら、ひとたまりもない。


今夜、エーンバルを召喚するつもりだ。

でも、その前に――

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