幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
「開け異界の門よ――」

あたしは召喚呪文を唱え始めた。


何度か幻獣を召喚しているうちに、自然に分かった事がある。

召喚呪文はただの言葉ではなく、音と音を魔力で依った糸のようなモノだ。


この空間に織り上げればいいのだ。

素早さが欲しければ素早く

力強さが欲しければ力強く


ジャルグがあたしの前方で、90度の方向転換をした。

図体のでかいヒュドラは方向転換しきれず、壁際で止まった。


「――来たれドラゴン  幻獣の王よ!」


指先で火花が散った。


甘ったるい毒の臭いを発しながら、ヒュドラがあたしの方に首を伸ばした。


空気が振動している。


――狙え

ジャルグがあたしの足元で言った。


「行け―――――――っ!」


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