幻獣のタペストリー ~落ちこぼれ魔導士の召喚魔法~
少年はそう名乗ると、あたしの手を取って、手の甲に軽くキスをした。

握手のつもりでいたあたしは、驚いて目を丸くした。


「ねぇ、これって正しいお作法ってやつ?」

「そうですが? だって魔導士ということはどちらかの姫君でしょう?」

「貴族なことは貴族だけど、あんまり身分は高くないんだ」

「そうなんですか?」

「だから気軽に扱ってもらえる?」

「はぁ。そうおっしゃるなら」

「よかった。堅苦しいの苦手なの」


「何が苦手だって?」

冷ややかな声に振り向くと、ホークが苦虫を噛みつぶしたような顔で立っていた。

「おはよう、アレクサンドラ。寄り道しないでまともに来ることはできないのかね?」


『堅苦しい』の極致だわ。


「ちょっと挨拶してただけ。そっちこそ、いちいち小言を言わないでいられないの?」


すると、ホークは頭をのけ反らせて笑った。

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