モラトリアムを抱きしめて
重たい身体を起こすと、頭からパサッと冷えたハンドタオルが落ちた。

あの子がしてくれたのかしら?

してくれたような、自分でしたような。

とにかくあの子を探すため立ち上がると、だんだんと視界がはっきりしてくる。

薄暗い部屋を見渡すと、カーテンの隙間から細いオレンジ色の光が射していた。

リビングにはいないようだ。と、いうかこの家にいるのだろうか。

どうやってあの傷だらけの少女と、私が帰ってこられたと言うのだろう。

はっきりと思い出せない。

頭には重さが残るばかりで。

自分の記憶の曖昧さに、あの少女があの公園にいたことさえ、疑わしく思えてくる。

そんな不安も、リビングのドアを開けると解決した。


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